●サングラスバッチ Aスキ溶融マニュアル ●
当社の工芸作家様向け定番バッチ「Aスキ」について、おおまかな溶融方法をご紹介致します。
また、当社のその他バッチ:FAスキ・AKスキ・Kスキ・ALスキなども基本的にこれに準じます。
ご参照下さい。
※坩堝のタイプや大きさ、溶解炉の種類の組み合わせによって溶融条件は本当に様々です。
ご紹介する温度等はあくまで参考値としてお考えください。
|
<はじめに>
ガラスの原料となる「バッチ」は珪砂とソーダ灰、炭酸カルシウムなどの化学薬品を一定の比率で
混合した粉体です。
そのバッチを約1400℃に熱して溶融することにより、ガラスになります。
溶融時、バッチを溶かす耐火性の入れ物を「坩堝」といい、「坩堝」を加熱する設備を「炉」や「窯」と
いいます。
この「坩堝」や「窯(炉)」には種類があり、この組み合わせによって溶融条件は様々です。 |
●坩堝について
坩堝の形状は大きく分けて「ネコツボ」と、「タンク」・「オープンポット」があります。
「ネコツボ」は熱源からの熱がガラスに直接触れない間接式の構造になっており、
「タンク」や「オープンポット」は熱源からの熱が直接触れる直接式の構造をしています。
窯の中の空気の状態は熱源からの熱により酸素が多くなったり少なくなったりと変化しますが、
ガラスの溶融はこの酸素の多い・少ないの雰囲気に影響されるので、安定してガラスを溶融する為には
熱源の雰囲気に左右されない間接式が有利です。
例えば、還元雰囲気系のガラス(セレン赤など)はオープンポットの場合、溶融雰囲気のコントロールが
難しいです。
※還元雰囲気・・・ガラスを溶解する際に、そのガラス原料の周囲に酸素が少ない状態のこと
また、直接式の坩堝は熱源の熱がそのままガラスに伝わるので、熱効率の点で見ると間接式より有利です。
●窯(炉)について
ガラスの溶融窯の種類は10トン〜100トンの規模で生産され商業用ガラスに使われる「タンク窯」と、
ガラス工房やガラス工場で一般的に使われている「坩堝窯」があります。
坩堝窯には、主にガラス工場などで使われ1つの窯で複数の坩堝を加熱する「連帯窯」と、
主にガラス工房で使われ1つの窯で基本的に1つの坩堝を加熱する「単独窯」があります。
(色ガラス用の小さな坩堝を一緒に入れている所もあります)
熱源に使われるのは「ガス」「電気」「灯油」「石炭」などで、ガスや電気が一般的です。
坩堝にバッチを投入します。
◆ポイント◆
●坩堝に初めてバッチを投入する際は、坩堝を十分に焼き締めした後、先にカレットを投入して
坩堝の表面に良くガラスをなじませておく。
また、通常バッチは数回に分けて投入するが、初めての投入は1回の投入量を通常よりも少なくする。
※使い初めは坩堝の壁面がまだ厚く、バッチを投入した際の急激な温度変化で坩堝が割れる
可能性が高い為 。
●バッチはカレットと混ぜて投入すると溶けやすくなる。
※カレット・・・ここで言うカレットとは溶融するバッチをガラス化させたもののこと。
バッチだけでは溶けにくいので、バッチより低温で溶けるカレットを一緒に
入れることにより、先に溶け出すカレットがバッチの溶融を促進する。
※バッチとカレットの比率・・・バッチ 60〜80%に対してカレット 20〜40% が好ましい。
カレットの比率が50%を超えるとガラスが脆くなりやすく、泡切れも少し悪くなる。
※きれいなクリアガラスを得たい場合は、「棹元(さおもと)」はカレットとして投入しないようにする。
★棹元・・・吹き竿の先に残るガラスのこと。ガラスがパイプと接する部分なので金属が付着することがある。
この棹元はカレットとしてガラス溶融時にバッチと合わせて投入することがあるが、金属が
ガラスの中に入ると色が付くので(例えば鉄分が入ると緑の色が付く)、
少量ならば
さほど影響は無いが、量が増えると色が濃くなり従来のクリアなガラスではなくなっていくので
注意が必要。
●バッチ投入後は入れたバッチが膨らみ盛り上がるので、それが落ち着いたら次のバッチを投入する。
溶解炉の温度を上げバッチを溶解しガラス化させます。
※温度計について
溶解炉の温度計の数値は実際のガラスの表面の温度と異なる。
特に温度計がバーナーなど熱源に近い場合にはかなり高く表示されるので注意が必要。
◆ポイント◆
●溶融温度カーブの基本は台形。両端ができるだけ立っていて(垂直に近く)、台形の高さ(最高温度)は
一つの目安として「1380℃くらい」あると良い。
※平均的にこの位の温度を設定されている所が多いが、最適な最高温度・溶融時間は、
坩堝のタイプ・炉のタイプ・温度計の位置のバランスにより様々であり、あくまで1380℃は目安としての
参考数値。
★バッチ投入後の温度グラフ
最高温度:約1380℃(参考値)
バッチ投入終了
●原料投入後はできるだけ早く温度を上昇させ高温状態をキープし、完全に溶解した時点で今度は
速やかに温度を下げる(生地を締める)。
※あまり最高温度が高すぎると坩堝が浸食され、脈理やブツが出ることがある。
ガラスが十分に溶けたら「締め」を行います。
「締め」とは、完全に溶解した状態のガラスの温度を一気に下げることを言います。
ガラスの生地を締めることによってガラス内の泡が中に吸収されます。
◆ポイント◆
●締め方は炉の形状にもよるが、通常溶解炉のフタを開けて一気に温度を下げる。
外気と触れさせることで、ガラスの表面の温度が早く下がり、坩堝内の雰囲気も安定する。
●泡切れのメカニズムとして、まずバッチ内の脱泡剤(酸化アンチモンなど)が高温で発泡してガラス内の
大きな泡を巻き込み、一緒にガラスの表面に上昇させる。
次に締める(一気に温度を下げる)ことによって残った小さな泡がガラスの生地の中に吸収される。
●締めの温度差は大きいほど効果があり、泡切れが良くなる(最高温度から100℃〜200℃くらい一気に下げる)。
締めの作業が終了したらスキミング(ガラスの表面をすくい取る)を行い生地をきれいにします。
溶融時の多少のトラブルは、丁寧にスキミングをすると解消される場合があるので
スキミングは
非常に重要です。
◆ポイント◆
●ガラスの表面を坩堝の壁に沿うように奥から手前にすくい、表面のゴミ(スカム)を手前に集める。
これを何回か行い、集まった部分を坩堝からまき出す。
※溶融後のガラスの表面には溶け残った原料や崩れた炉材などが浮いており、取り除かないと
ブツや脈理の原因となる。
◆作業のポイント◆
●作業温度は坩堝や窯のタイプはもちろん、製作する商品や硬さの好みなどにより様々である。
それぞれの組み合わせの特徴を掴んで上手く調整していくことが大切。
●作業中もガラス成分の揮発が必ずあるので、状況に合わせてスキミングを実施するのが好ましい。
●作業後坩堝に残ったガラスをそのままにしておくと、ガラスの表面の成分(アルカリ成分、
ホウ素成分など)が揮発して高シリカの状態となり、結晶が生成されやすくなってブツや
脈理の原因となる。
できるだけガラスを一度坩堝からかい出してカレットにし、バッチ投入時に使用するのが
好ましい。
かい出しは出来れば毎日、難しい場合は少なくとも週に1回は実施すると良い。
※どうしてもかい出せない場合は、丹念にスキミングを行いできるだけガラスの生地をきれいにしてから
使用する。
皆様からのご要望が多かった為、簡単ではありますがバッチ溶融マニュアルを作成致しました。
当社が平均的に見た数値や条件をまとめたものですので、全てのお客様の設備環境に当てはまるものでは
ありませんが、少しでもバッチ溶融時のお役に立てますと幸いです。
ご意見・ご質問などございましたら、各営業担当までお問い合わせ下さい。
<三徳工業株式会社>
本社営業部(大阪):TEL 06-6574-3571 FAX 06-6574-3622
東京支店 :TEL 03-5621-3811 FAX 03-5621-3876
|